コンセプター・和田健司さんによるエッセイ「love letter from K」。KOZでのお買い物がもっと楽しくなるヒントをお届けします。
Season8-7「続・さの🐟🍶な気分」
あけましておめでとうございます🎍元旦早々、なかなか日本が大変な状況になっておりますが、皆さんの周りでの被害はなかったでしょうか。被災された方をしのぶ気持ちは持ちながらも、僕達は周りの人のために幸せを作っていければと感じています。今年もLLFK、駆け抜けて参ります🐉
頂き→ます
正月に富士山を見ると、神聖な気分になります。ついつい近くに寄り道をして、ゆっくり眺めながら、深呼吸。冷たい空気と共に、体の中が浄化されていくのがわかります。分厚い雲をマフラーのように巻き冬の装いの姿も美しい。雲の下には雪が全くないんですね。時間が経つのも忘れて、威風堂々として姿を感じているうちに、ふと脳裏にフラッシュバックしたのがこの料理。
泉佐野の富士こと、「中華料理屋ときよし」さんの天津飯。後にも先にも、こんなにインパクトある天津飯を見たことはありません。餡という名の海の中からひょっこりと頭を覗かせる黄色い山は、まさにネッシ…いやここは黄色い富士山にしておきましょう。ビジュアルとは裏腹に、お味は醤油ベースの優しめでスルスル食べれてしまいます。やっぱり、天津飯も飲み物だったか…。
京都などの有名な観光地には、訪れるべきスポット・食べるべき料理が沢山あります。そしてそれらは事前にわかっている事が多いので、実際に体験することが、ある種の“情報の確認作業”になってしまうことがしばしばあります。思ったより…みたいな、あれです。
泉佐野は、そこまで有名な場所ではありません。事前に調べる情報はあまりなく、取引先の方や知り合いのオススメを聞き、素直に訪れてみる。そうすると、突然の出会いがあったりします。そういう時に限って妙に記憶に焼き付いていて、また訪れるきっかけになったり。この天津飯のように。
夏の宝石
夏だから水なす買っていったらどうですか、と薦められ、言われるがままに買った「水なすのぬか漬け」。泉佐野の名産のようで、夏が旬の野菜。泉州水なすは、他のとは一線を画し、生でそのまま食べることができる贅沢な食材です。 薄く瑞々しい皮と、濃厚で甘みのある味わいが特徴で、皮ごと食べることで、他のなすとは一味違った食感を楽しめます。
産直市場「よってって」の冷蔵庫にずらりと並んだ水なすたち。ずっしりと重いのに、250円とお手頃な値段。開ける日によって塩味が深くなるそうで、食べ頃を自分で調整できるのも面白い。変わった食べ方としては、生ハムで巻いてオリーブオイルを垂らすと絶品ということで、実際にやってみた所、写真を撮る暇もなく一瞬でなくなったので(泣)、また今年の夏にリベンジしてちゃんと撮影をしますね。
刺身配り
前回でも語ったのですが、泉佐野は海鮮楽園。海の幸は外せないポイント。今まで泉佐野の色々な居酒屋に通った中で、それをきっかけに気づいた事がありました。
「刺し盛り、良かったら取り分けましょうか?」と店の大将が親切に声を掛けてくれました。注文した刺身の盛り合わせを一人前づつに分けてくれるらしい。なんと心優しい…「お願いします。」と笑顔で返事をすること数分後、目の前に現れた一皿。
なんという品格。美しい。というか食べる前からもう美味しいのは確定でしょう。ふっくらとしていて、みずみずしく、鮮度があるからかキラキラしている。そして、口の中に入れれば、それらが優しい味に変わっていくのです。もちろん合わせるのは日本酒。
同じような事が、東京でもありました。「良かったら、お刺身取り分けてきましょうか?」と女将さん。ちょこんと載った刺身に相応しい美味しさなのですが、一切れづつ堪能して完食。その瞬間、得体の知れぬ違和感を感じたのです。最初はわからなかったのですが、帰り道にはっと気づきました。“ここ数回連続で取り分けてもらっている…。”と。
刺身の盛り合わせって、盛ってある大皿を皆で見つめて、「どうぞどうぞ」とか「これ何の魚?」とか「まだマグロ食べてない人います?」「最後の一切れ食べちゃいますよ〜」なんて会話をしながら楽しむ料理なんだって、この時初めて気づいたのです。衛生的にとか、最後の方面倒そうってのはあるけれど、なんかそこも含めての料理の楽しみ方なのかなって思うんです。ど〜ん盛ってこそ、刺し盛りなれってね。
泉佐野が教えてくれること
それをきっかけに色々な事を考えるようになりました。最近でいえば「ハイボールって本当に好きで飲んでいるのかな?」と。糖質が少ないからと選ぶようになってから暫く経つけれど、二日酔い気味になる事もあるし、実は体に合ってなくないか!?と。これを気づかせてくれたのも泉佐野でした。泉佐野にいる時は和食がメインなので、日本酒を良く飲むのですがそちらの方が体が楽だという事に気づいたのです。
そして日本酒にも、「どうぞどうぞ」とお銚子で相手の徳利に注ぐ日本酒特有の楽しみ方があります。色々な国の料理も発見の連続だけど、灯台もと暗し。一番心に染みる文化はやっぱり日本にあり。今はなんだか日本食に日本酒の気分。
そんな気づきをくれる場所、泉佐野。これからも色々なこと、教えてください。
つづく
スタッフコメント
「刺身の盛り合わせって、盛ってある大皿を皆で見つめて(中略)会話をしながら楽しむ料理」そういえばそうだな、と納得。もちろん取り分けもありで、その時々の自分に合った「楽しみ方」をちょっぴり考えてみるのもいいかも。食事をはじめ、生活そのものが豊かになりそうだなと思いました!
みんなでワイワイと会話が弾みそうな、KOZの食器はこちら
和田 健司
オランダDesign Academy EindhovenにてDroog Design ハイス・バッカー氏に師事、コンセプチュアルデザインを学ぶ。 同大学院修士課程修了。大手広告代理店勤務の後、2011年 “what is design?”を理念とする(株)デザインの研究所を設立。研究に基づく新たな気付きを、個人から企業まで様々な顧客に価値として提供し続けるコンセプター。(インスタグラム:@k_enjiwada)